寺本/岡本研究室は,航空宇宙推進系(ロケットエンジンやジェットエンジン)の内部熱流体に関する問題を主な研究対象としています.

ロケットエンジンについては,燃焼器へ噴射される超臨界噴流に関する研究や,超音速ジェットが地面と衝突して発生する音響波に関する研究を行っています.またジェットエンジンについては,圧縮機の旋回失速に関する数値解析や,小型化に必要なウェーブロータや,テスラタービン・テスラポンプといった新しいデバイスに関する研究にも取り組んでいます. また,これらの問題を解析するために必要となる数値解析手法についての研究も行っています.

数値計算

よく「F1マシンの周りの空気の流れをスーパーコンピュータで計算しました」とか「津波を数値解析によってシミュレーションしました」というような話をニュースなどで聞きませんか? これらの話は,流体(空気や水などの流れ)の動きをコンピュータ上でシミュレーションするCFD(Computational Fluid Dynamics, 数値流体力学)という手法を用いたことを意味しています. 寺本/岡本研究室では,航空宇宙推進系(ロケットエンジンやジェットエンジン)における流体の動きを研究するため,このCFDという手法を実験と同じくらい使用しています. このCFDというものが一体どのようなものなのかイメージがわかないという方も多いのではないでしょうか. ここでは,このCFDというという手法がどのようなものなのか,簡単に(高校生から大学1~2年生くらいの知識を使って)説明します.

超臨界流体

ロケットエンジンは,噴射器を使って燃焼室に燃料を供給しています.燃焼室内は100気圧の高圧かつ3000度の高温,さらにそこへ噴射する燃料は温度-170度の極低温です.つまりロケットエンジン内部では,高圧,高温,極低温という三つの特殊な条件が混ざっているということになります.エンジン内部での燃料の挙動はエンジンの性能に大きく影響しますが,この特殊な条件によって燃料を噴射するときにどのような現象が起こるのか,ということはあまりわかっていません.そこでこのロケットエンジン内部の燃料噴射を実験によって再現することで,どのような現象が起こっているのかを明らかにする研究をしています.

ジェット音響

ロケットを打上げる際に生じる非常に強い音は,人工衛星を振動させ壊してしまうおそれがあるため,その予測や予防が求められます. ところが現在,この音を生み出すメカニズムにはまだ解っていない多くの点が残されています. このうち寺本/岡本研究室では,打上げの一番初めの段階でロケットエンジンのジェットが地面に衝突することで発生する音の特徴を風洞実験で調べ,その結果からこの音を生み出す物理的なメカニズムに迫ろうとしています.

ウェーブロータ

ウェーブロータは,衝撃波を利用して空気を圧縮する空気です. 小型化した場合でも性能を発揮できると予測されていることから,ジェットエンジンや小型発電機など小型ガスタービンへの応用も期待されます. 寺本/岡本研究室では,小型ガスタービンへの搭載を想定したマイクロウェーブロータの実用化に向けた研究を実験的・数値解析的に取り組んでいます.

テスラタービン/テスラポンプ

テスラタービン/テスラポンプとは,ドーナツ状の円板を等間隔で重ねたものを羽根車に使用しているターボ機械です. 摩擦力を用いて流体と羽根車との間でエネルギーの交換を行なっていますが,その原理上小型化しても高効率を維持できると期待されています. 寺本/岡本研究室では,このテスラタービン/テスラポンプの作動特性について研究を行なっています.